月の記録 第34話


「襲撃犯は全員確保できたのね?解ったわ、すぐに向かうわ。そうね、30分もかからないんじゃないかしら」

スザクからの連絡を受けたマリアンヌは、そういう事みたいよ?と、傍にいたシャルルに言った。今回の警備責任者はジノだが、今回はその上にマリアンヌが控えていた。緊急時には直接マリアンヌに連絡を入れることになっていたのだが、ここは顔見知りのスザクがいい!と、ジノはスザクに押し付けた。ブリタニアのインの影の女帝マリアンヌとまで言われるほどの皇妃相手には、スリーといえど怖じ気づくらしい。

「ビスマルク、急ぎ手配を」
「イエス・ユアマジェスティ」

シャルルの言葉に従い、ビスマルクは謁見の間を辞した。 今ここにいるのは、シャルルとマリアンヌのみ。今日の謁見再開まではあと1時間と言ったところか。

「3回、か」
「そうね、3回も狙われたわ」

前回は皇族なら誰でもよかったのか、あるいはユーフェミアかルルーシュかと迷う所はあった。だが、今回はルルーシュだけが向かった視察。その先で襲撃があっただけではなく、日程を変え、道を変えて進んだ先にまで現れた。
ペンドラゴンを出ていた皇族はルルーシュだけでは無い。
だが、狙われたのは今回もルルーシュ。
皇族が移動するのだからそれなりの車両が出る。
だから少ない護衛で動いたルルーシュをカモと見た可能性は否定しきれないが、その場合はすでにルルーシュがいない屋敷を襲撃し、その後別ルートを進んだにも関わらず現れた意味が解らなくなる。

「内通者がいると見た方がいいだろう」
「ええ。その内通者は、視察先を急に出立する事には対応できず、連絡が遅れた。でも、C.C.の屋敷についてしまえば、いくらでも一人の時間は取れる」

自分たちが進んだ道、そして滞在している屋敷を伝えれば、ペンドラゴンへ向かうルートはある程度予想できる。信頼できる者を護衛に選んだのに、内通者がいたということは、以前からこのために紛れ込んでいたネズミがいたということだ。となれば、護衛の数が理由ではなく、最初から狙いはルルーシュだったと考えるのが自然だろう。

「ルルーシュの護衛を増やすしかあるまい」
「あら、それじゃ相手をあぶり出せないじゃない。スザク君を貸してくれれば十分よ」

あとは、私がいるのだから。

「マリアンヌ、何を考えておる」
「2度までは偶然で片付けられるわね。3度目はその延長線。でも4度重なれば必然と考えるべきじゃない?」

そう、今回の件まではたまたまだと考えてもいい。たまたまルルーシュが狙われたのだと。皇位継承権が低く能力も無い者が狙われたのだと。だが次も、4度も狙うのなら、相応の理由があるはずだ。ルルーシュを殺さなければいけない理由が。

「情報なら、これから引き出せる」
「捕縛したテロリストから情報を得るのはもちろんだけど、どうせ全員捕まえたわけではないでしょう?」

特に首謀者は、今回の襲撃に直接関与しているとは思えない。

「忘れたのかしらシャルル。ルルーシュは餌なのよ」

極上の、餌。

「忘れてはおらん・・・が」
「スザク君をユーフェミアからしばらく借りれるように手配お願いね。何ならジノとアーニャも借りようかしら?」
「何を考えておる、マリアンヌ」
「あら?解らないのかしら?愛する息子を護るために、戦おうとしているのよ」
「・・・」
「そんなに不機嫌そうな顔しないの。大丈夫よ、C.C.も動けるのだし、何も問題はないわ」
「まあいい、無理だけはするな」
「解っているわ。私は母親よ?我が子を餌に使う以上、完璧な作戦を練るわ」

我が子が危険な状況になれば、母親は思慮深く、そして凶暴になるのよ?

「ふむ・・・では、セブン、スリー、シックスをしばし預けよう」
「ふふ、ありがとうあなた。でも、返さないかもしれないわよ?」

特に、スザク君は。
マリアンヌは美しい笑顔を浮かべ一礼した後、マリアンヌもまた謁見の間を後にした。



普段ほぼ車が通らない峠は、今軍人で溢れかえっていた。
マリアンヌが言った通り30分もかからずに軍のヘリが空を飛び交い、そこから軍人が次々と地上へ降り立った。それなりに広さのある道路だが、ヘリが降りられるほどの幅はない為、今すぐにテロリストを動かす事は出来ないが、彼らがしっかりとテロリストたちを縛り上げ、軍事車両が到着するまでここで見張りをしてくれる。
ルルーシュ達は、ある程度落ち着いたのを見計らい、この場を後にした。
数機のヘリが上空を護る形で追従してくるほかは、先ほどとは変わらない。
いや、車内に関しては、先ほどとは全く違っていたが。

「そんなに嫌そうな顔をするな。美少女が隣に座っているのだから、喜ぶべきではないのか?」
「・・・これがいつもの自分の顔です」

そう、先ほどまでルルーシュと二人きりだった車内に、魔女が加わっていたのだ。しかも後部座席の中央に堂々と座っている。身分で言うなら、その場所はルルーシュの場所だ。だが、この魔女は気にするそぶりはないし、ルルーシュはスザクとの壁が出来た事になるため、文句ひとつ言わずにいた。それどころか、やはり調子が悪いのだろう。気がつけばC.C.の肩に体を預け、すやすやと寝入っていた。
先ほどまでそれは僕の役目だったのにという思いもあり、余計にスザクはイラッとしていた。彼女がいなければ、二人きりでいられたのに。当たり前のようにルルーシュの肩を抱き、その体を支えている姿も羨ましい。自分の手は拒絶する皇子が、当たり前のように魔女の手を受け入れている姿にも嫉妬以外の感情は浮かばない。

「そうは見えないが、まあいい。お前は気づいているか?あの襲撃のことだ」
「襲撃の?なにか犯人につながる情報でも?」
「いや、それは私に解る事では無い。ユーフェミアとルルーシュがいた夜会が襲撃された事、そして視察先の館が襲撃された事、そして今回の件は全て繋がっている」
「・・・ルルーシュ殿下が狙われているという事ですか」
「そう言う事だ。これから忙しくなるな」
「・・・自分は、皇帝陛下の騎士です」
「お飾りの騎士でもあるだろう?ああ、ルルーシュではなく、ユーフェミアの話だ」
「ユーフェミア様もルルーシュ様もお飾りではありません」
「言い切ったな?そろそろユーフェミアは公務に戻るらしい。せいぜい頑張れよ、騎士殿。ルルーシュは私たちでどうにかする」
「・・・」

スザクはユーフェミアの専任騎士でもある。
だから、ユーフェミアが公務に戻るのであれば、ユーフェミアの傍につく事が多くなるだろう。ルルーシュの傍には、居られなくなる。
こんなに大事な時に、離れなければならない。

「そう睨むな。ユーフェミアの騎士になると承諾したのはお前だ。もう少し待てば、マリアンヌが別の手を打ったというのに、どうして自分一人で決めてしまったんだ。マリアンヌに相談していれば未来は変わっていただろう」
「マリアンヌ様が、他の手段を?」

そんな話聞いていない。
もしかしたら、ルルーシュの傍を離れずに済む手を打っていてくれたのか?

「過ぎた話だ。気にするな」

余計な事を言ってしまったなとC.C.が話を止めた時に、携帯のバイブ音が聞こえた。私の携帯だと、C.C.はポケットから携帯を取り出した。

「・・・なんだ、マリアンヌか。どうした?ああ、ルルーシュも枢木スザクもここにいるが?・・・本気か?いや、私は邪魔はしないさ。だが・・・そうか、全て覚悟の上ならば好きにすればいい。ああ、伝えておこう」

電話を切ったC.C.は呆れたように息を吐いた後スザクを見た。

「枢木スザクとジノ・ヴァインベルグは任務終了後、アリエスへ向かえ。暫くの間マリアンヌの指揮下に入る事になった」
「マリアンヌ様の?」
「もう一人、アーニャ・アールストレイムもだ」
「・・・ルルーシュ殿下を守るため、ですか」
「それもあるが、大元を断つためらしいな」
「大元?テロの首謀者を?」
「そのために、ルルーシュには餌になってもらうそうだ」

餌。
その言葉に、スザクは顔色を無くした。

「せいぜい頑張って坊やを護ってくれ」

そう言いながら、C.C.は眠るルルーシュの頭を優しく撫でた。

33話
35話